決算書の読み方①(損益計算書)

決算書とはひとことで言えば「会社の通信簿」です。事業をやっている方なら少なくとも年に1回は決算書(確定申告書)に触れる機会があると思います。

しかし意外と「決算書の見方がよくわからない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

作成は税理士さんにお任せしているとしても、内容についてはざっくりとでもご自身で理解できることが望ましいです。簡単にですが解説してみようと思います。

決算書の構成

決算書は大きく分けて次の4つの表で構成されています。

 ①損益計算書(P/L):1年間の経営成績を表す表

 ②貸借対照表(B/S):決算日(①の最終日時点)における財産の状態を表す表

 ③キャッシュフロー計算書(C/F):1年間の資金の流れを表す表

 ④株主資本等変動計算書:1年間の純資産の動きを表す表

以下でこれら4つについて解説いたします。

①損益計算書

損益計算書はその事業所の1年間の利益の状況を表します。

家庭では家計簿をつけて「わが家がこの1年間でどれだけ黒字(赤字)だったのか」を把握しますが、事業所では家計簿の代わりに損益計算書を使います。

つまり損益計算書は、「家計簿の事業所バージョン」だと考えていただいてけっこうだと思います。ということで、まずは頭慣らしとして、家計簿の例を見てみましょう。

(例)ある家庭の1年間の家計簿まとめ

 ※わかりやすくするため、支出を赤色にしています。

①給料収入600万円
②支出合計(家賃、食費、光熱費、こづかいなど)550万円
③通常収支(①-②)50万円
(600万円ー550万円)
④予想外収入(遺産相続)300万円
⑤予想外支出(火災で自宅一部焼失)200万円
⑥最終収支(③+④-⑤)150万円
(50万円+300万円ー200万円)

通常のやりくりの範囲で見ると、③の通常収支のとおり1年間で50万円の黒字です。ところが遺産相続や火災があり、予想外の収入や出費が発生しています(④、⑤)。なんだかんだありますが、結局のところ年間150万円黒字でした(⑥)

大きなポイントは以下の2点です。

●結論だけ知りたければ、表の最下段だけ見ればOK

●予想外のできごと(相続や被災など)は項目を通常収支とは別に立てて管理します。(もしこれらを通常収支に含めてしまうと、数年後に見直したときに「あのころは年収600万円でやりくりしてたはずなのに、900万円の収入と750円の支出があるのはどういうことだろう?」と、わけがわからなくなってしまいます。)

この2つのポイントは企業の損益計算書でも同じです。では実際に損益計算書の例を見てみましょう。家計簿よりは少し複雑になりますが、本質は同じですよ。

(例)ある企業の損益計算書

売上高A10億円
売上原価B6億円
 売上総利益C=A-B4億円(10億ー6億)
販売費及び一般管理費
(※いわゆる「経費」のことです)
D3億円
 営業利益E=C-D1億円(4億ー3億)
営業外収益F百万円
営業外費用G2百万円
 経常利益H=E+F-G9千9百万円
(1億+百万ー2百万)
特別利益I2千万円
特別損失J4百万円
 税引前当期純利益K=H+I-J1億1千5百万円
(9千9百万+2千万ー4百万)
法人税、住民税及び事業税L2千万円
 当期純利益M=K-L9千5百万円
(1億1千5百万ー2千万)
※税額(L欄)についてはあくまで架空の金額です。正しい税金計算は税理士にお尋ねください。

大きなポイントは家計簿の見方と同じです。

●結論だけ知りたければ、表の最下段だけ見ればOK(Mの欄)

●予想外のできごとは項目を通常収支とは別に立てて管理します。(I欄、J欄)

さらに詳しく見てみましょう。

損益計算書には「5種類の利益」が記載されています。太字で示した「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」です。ざっくりとですが、それぞれを見ていきましょう。

・売上総利益

売上総利益は、売上から原価(材料費)を引いたものです。粗利という言い方をすることもあります。売上に対する割合を示した「売上総利益率(粗利率)」という指標もありますが、これは業種によりかなり大きく変動があります。(数%~90%程度)

・営業利益

ここから本格的な「利益」の概念が始まります。営業利益は、売上から材料費と諸経費(人件費や家賃、光熱費etc…)を引いたものであり、「本業の実力」を示す大事な指標です。

ここがマイナスだと、本業で稼ぐ力がないということになります。事業をやればやるほど赤字となる状態であるため、なんとしてもここはプラスにもっていきたいところです。

・経常利益

営業利益に、営業で発生する収益を足したり、営業で発生する費用を引いたりしたものです。

会社の定款に記載された事業目的とも関わるのですが、中小企業ではざっくりと「営業利益に利息の数字を足したり引いたりしたもの」と考えてよいと思います。

金融機関にお金を預けていれば利息が入りますし(営業外収益)、お金を借りていれば利息を取られます(営業外費用)。営業利益にこれらの数字を足し引きしたのが経常利益です。

もしここがマイナスとなっていると、利息を払う力がないという意味になり、金融機関の貸付の審査がぐっと厳しくなってきます。

・税引前当期純利益

経常利益に特別利益を足して特別損失を引いたものです。特別利益(損失)は、めったに発生しないものを指します。(家計簿の相続や被災などにあたります)

会社の土地を売却して特別利益が生じたり、社用車が盗難にあって特別損失が生じたりといったケースで、その金額を経常利益に加味し、この税引前当期純利益という数字が出てきます。ここから税金を引いたらいよいよゴールです。

・当期純利益

ここがゴール、最終的に企業に残るお金です。税引前当期純利益から税金を払ったあとの数字です。シンプルに「純利益」という概念でよいと思います。ここを増やしていくことが企業の大きな目標のひとつです。

今回は損益計算書の様々な利益を見てみました。それぞれ意味のある指標です。いずれもしっかりとおさえておきましょう。

次回記事(貸借対照表)についてはこちら

行政書士にご相談ください

財務分析、ロカベン、資金繰り表、その他資料の作成いたします。お困りの際は当事務所にご相談ください。

・料金の目安はこちらをご覧ください。

・お問い合わせフォームはこちらからどうぞ

・電話(0857)74-3850

・メール office.kawai99@gmail.com